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広島高等裁判所 昭和37年(ネ)262号 判決

控訴人 東与吉

右訴訟代理人弁護士 ○○○○

被控訴人 松岡正夫

右訴訟代理人弁護士 原田香留夫

主文

本訴は昭和三九年一月一四日の経過により控訴の取下げがあつたものとみなされ終了した。

昭和三九年一月三〇日受付の控訴人の口頭弁論期日指定申立後の訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、昭和三九年一月三〇日受付の期日指定申立書をもつて本件控訴事件につき口頭弁論期日の指定を求める旨申立て、その事由として、「控訴代理人は、本件第四回口頭弁論期日として昭和三八年一〇月一四日午前一〇時の指定をうけ、同時刻頃所定の法廷に出廷したが被控訴代理人が出席しなかつたので、他の用件をすませた上後刻出廷することを廷吏に申出でて一たん退廷し、同日午前中再度本件法廷に出廷したが前同様被控訴代理人が出席しなかつたのでそのまま退廷したものである。したがつて右期日の調書に各当事者不出頭と記載されているが、右のように控訴代理人は法廷に出席したのであるから、右記載は不当であり、民事訴訟法第三六三条、第二三八条の適用をうけるばあいでない。よつて、本件口頭弁論期日の指定を求める。」とのべた。

本案につき、控訴代理人は、「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する、控訴費用は控訴人の負担とする、」との判決を求めた。

≪以下事実省略≫

理由

本件控訴が民事訴訟法第三六三条、第二三八条により取下とみなされたか否かにつき判断する。

当審第四回口頭弁論調書によると、右期日は昭和三八年一〇月一四日午前一〇時に開かれ、各当事者不出頭と記載されていることが認められ、その後三月以内に期日指定の申立がなされていないことが記録上明白である。控訴人は本件期日指定申立の事由として控訴代理人において右期日に出席したと主張するが、当事者またはその代理人が口頭弁論期日に出席したとするには、裁判所が当該事件の呼上をなしたとき出席していることを必要とするものであるところ、前記第四回口頭弁論調書の各当事者不出頭との記載は右期日に事件の呼上がなされたとき当事者双方が欠席したことを意味するものにほかならず、そして右記載は口頭弁論の方式に関する事項であるから民事訴訟法第一四七条によりその遵守は調書による証明を許すのみで、他の証明を許さないものである。したがつて、右調書の記載に反し控訴代理人が右期日に出席したとの控訴人主張事実はこれを認めるに由ないものである。

以上によれば、本件控訴は民事訴訟法第三六三条、第二三八条により、右昭和三八年一〇月一四日の期日に当事者双方が欠席し、その後三月以内に期日指定の申立がなかつたのであるから、昭和三九年一月一四日の経過により取下げたものとみなされ本訴はこれにより終了したものである。

よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条第八九条を適用したうえ主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本冬樹 裁判官 胡田勲 長谷川茂治)

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